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弁護士/医学博士監修 産科医療過誤 解決への安心読本 「脳性麻痺」 » 産科の医療過誤だと思ったら 知っておきたい!賠償請求や裁判のこと » 医療過誤を疑ったらやっておくべきこと

医療過誤を疑ったらやっておくべきこと

ここでは、「医療過誤かもしれない」と思ったときに、やっておくべきことを紹介します。メモをとること、資料を集めて保存すること、カルテを入手すること、担当医師と相談する際の注意点やおすすめの相談先についても解説していますので、参考にしてください。

まず何をすべきか?

出産時の医療過誤を疑ったら、すぐに診療記録の入手に努めてください。医療過誤で訴訟を行う場合、裁判所が非常に重視するのがカルテや画像をはじめとした診療の記録・情報です。医療裁判のための証拠を集める手段としては、カルテ開示請求と証拠保全があります。

カルテ開示とは、患者さん等からの求めに応じて診療記録等の閲覧・謄写交付を行うこと。また、必要に応じて担当者からの説明を行うことです。証拠保全とは、民事訴訟において前もって証拠を調べておかなければその証拠を使うことが難しい場合に実施される、証拠を集めて調べるための手続きのことです。具体的には以下の方法で診療記録を入手することができます。

弁護士に依頼のうえでカルテの開示請求を行う

カルテ(診療記録)はとても重要な資料ですが、自分たちで開示請求すると、資料が不足していることがあります。
そのため、カルテの開示請求は個人ではなく、医療裁判に詳しい専門家(弁護士)に依頼しましょう。

弁護士による開示請求は、基本的に、以下の流れとなります。

カルテ改ざんのリスクが小さい場合

最近は、任意の開示請求に応じる病院がほとんどです。電子カルテ化が進んでいるのでカルテ改ざんのリスクは小さく、法的手段である証拠保全を行う機会は減少しました。この場合は、任意の開示請求を行います。

病院側がこの開示請求に応じなかった場合は、証拠保全を行います。

カルテ改ざんのリスクがある場合

紙のカルテなどの場合です。この場合は、法的手段である証拠保全を行います。

弁護士に依頼するためにメモしておきたいこと

脳性麻痺が起こるまでの経緯や状況をメモに記録しておくことは大切です。弁護士に相談する際にも役立ちますし、それらの記録が、不法行為(医療過誤)を証明するための補完資料の役割を担うこともあるからです。

例えば、以下のような内容です。

上記以外にも、医師や医療機関からの手紙、紹介状、処方された薬の説明書、お薬手帳、出産同意書、本人の日記やSNSの記録など、医療過誤に関係のあることはメモしておくとよいでしょう。

担当医師と面談する際の注意点

弁護士法人ALG&Associates

医療過誤の真相を知るため、担当医師と面談する際は、以下の2点に注意しましょう。

それぞれのポイントを解説します。

感情をコントロールする

面談の目的は治療に関する医師の説明を聞くことです。実際にどのような経緯で、いつ、何が行われたのか、状況を明らかにしなければ、医療過誤の有無を判断することはできません。そのため、医師の説明を受けるときは、高ぶる感情をコントロールし、冷静な態度で聞く必要があります。

医師との面談は法廷の場ではなく、情報収集の場であると考えましょう。必要な情報を引き出すためにも、冷静さを保つことが大切です。

説明の内容をしっかり記録する

前項で述べたとおり、医師との面談は情報収集が目的です。熱心に聞くことも大切ですが、メモへの記録も必要になります。せっかく重要な情報を医師から引き出しても、忘れてしまったのでは元も子もありません。説明を聞いた後、必ずメモに記録しましょう。

医師からの説明で重要な項目としては、異変が起こるまでの処置の内容、投薬について、事故や副作用、合併症の可能性、医療事故発生時の状況や医療従事者の対応などです。事故直後の説明と現在の説明に異同があれば、その理由も確認する必要があります。なぜ異変が起こったのか、医師の見解も押さえておきましょう。

証拠保全の流れ

カルテ開示で十分は証拠を得られなかった場合、またはカルテ改ざんの可能性が見つかった場合は裁判所による証拠保全手続きを行います。具体的な流れは以下の通りです。

証拠保全の申し立て

まずは裁判所に証拠保全の申し立てをします。その際、なぜ証拠保全が必要なのかといった理由が必要です。こうなるに至った経過やカルテ改ざんの可能性、隠匿の恐れがあることを述べることが求められます。

裁判官との面談

保全の理由に関してのすり合わせ、証拠保全期日の日程や場所、当日の流れなどについて事前に裁判官と打ち合わせをします。

証拠保全当日

打ち合わせで決められた日時に、裁判官と裁判所書記官が証拠があるとされる場所に赴き、証拠の開示を求めます。通常、証拠保全を申し立てた本人や代理人も同行します。証拠の入手にカメラが必要な場合、カメラマンが同行することもあります。病院側が証拠開示の求めに応じなかったとしても、裁判官がその場で証拠提示命令を行うので証拠を隠し通されることはありません。

証拠保全のメリット

改ざんを防げる

証拠保全は、カルテ開示よりも改ざんのリスクが低くなります。というのも証拠保全は医療機関に通達されない形で裁判所の決定が出されるからです。対象の医療機関に対して事前の予告なく執行官(執行裁判所の補助機関として業務を行ったり、訴状等の送達を行ったりする)が赴いて決定の旨を渡します。この段階から1時間後までに裁判官が医療機関を訪れ、カルテなどの保全をします。つまり医療機関側からすれば、「突然裁判所から通達が届いて、そのあとすぐに裁判官が来て証拠の開示を求められる」という状態になるので、証拠の改ざんをする猶予を与えない仕組みになっているのです。

記録のすべてを保全できる

カルテ開示の場合は、交付された記録がカルテのすべてかどうかを確認する手段がありません。しかし証拠保全の場合は該当する患者のカルテをすべて提出しているかの確認や原本との照合ができるので、改ざんの可能性が限りなく低くなります。



証拠保全は原則として弁護士による申し立てが必要であり費用や時間がかかります。しかし開示漏れや改ざんのリスクが低いので、裁判で損害賠償を得るには有効な手段です。訴訟の初動に関わる重要な手続きなので、ミスなく慎重に進められるように弁護士に依頼しましょう。

医療過誤かもしれないと思ったら弁護士へ

「医療過誤かもしれない」と思ったときの相談先は、弁護士がおすすめです。行政が運営する「医療安全相談センター」に相談する方法もありますが、対応できる相談内容に限界があります。

例えば、過失の有無や因果関係を判断したり、医師の判断や検査内容の是非を判断したり、医療機関を相手にした紛争の仲介や調停に対応したりすることは、医療安全相談センターではできません。

一方、弁護士の場合は、情報収集から訴訟対応まで一気通貫。医療過誤問題の全般にわたって対応することができます。被害者の話を聞くだけでなく、今後どうしたいのか、希望に合わせて実際に対応したり、交渉したり、アドバイスしたりできるのです。

ただし、弁護士に相談する場合はなるべく早いタイミングが良いでしょう。時間が経てば経つほど、関係者の記憶があいまいになっていき、必要な情報収集や証拠保全が難しくなります。ともかく一人で悩まずに、法律のプロである弁護士に相談してください。

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東京都新宿区西新宿に本部を置き、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、福岡、バンコクなど国内外10拠点以上に事務所を展開。総勢90名以上の弁護士と200名を超えるスタッフが、医療過誤をはじめとする幅広い分野で問題や悩みを抱えるお客様をサポートしています。(数字は2023年6月調査時点)

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