MENU
弁護士/医学博士監修 産科医療過誤 解決への安心読本 「脳性麻痺」 » 【やさしく解説 】産科医療過誤による脳性麻痺の和解・裁判解決事例 » 核黄疸(高ビリルビン)の治療の遅れの事例

核黄疸(高ビリルビン)の治療の遅れの事例

この事例は、ディカルオンライン医療裁判研究会公式サイトで紹介されている事例から紹介しています。

TAG
  • 1億3,047万円の損害賠償命令
  • 胎児仮死
  • 帝王切開
  • 新生児高ビリルビン血症
  • 光線療法いったん見送る
  • ビリルビン値が上昇
  • アテトーゼ型脳性麻痺
  • 光線療法の開始義務違反

事例の要点と結果

胎児仮死のため、帝王切開で生まれてきた赤ちゃんの事例です。

赤ちゃんは出生児体重が1824グラムの未熟児で、大学病院のNICUに搬送されました。生まれてから約7時間後、赤ちゃんの皮膚に黄色味が出現し、検査データからも新生児高ビリルビン血症(※1)と考えられました。しかし担当医は、治療基準を満たしていない、ビリルビン値の低下がみられるなどの理由で光線療法(※2)の開始をいったん見送っています。

その後、赤ちゃんにけいれんなどの症状が出現、ビリルビン値が上昇したことで光線療法を開始しましたが、結果としてアテトーゼ型脳性麻痺(※3)の後遺症が残ってしまったのです。

解決までの詳細

本事例では、新生児高ビリルビン血症に対して光線療法の開始が遅れたことに関して、ご家族は大学病院に対して損害賠償を求めています。

主な争点は、特定の基準に基づいて光線療法を開始しなかった医師の裁量が認められるかどうかということです。光線療法には複数の開始基準が存在し、それぞれに合理的な根拠がある以上、どの基準を採用するかは医師の裁量に委ねられています。この医師が採用している基準は広く現場に普及しており、内容に不合理な点はありません。しかし、医師の判断が基準に合わない、もしくは基準の裁量の範囲外であれば話は別です。

赤ちゃんが大学病院に搬送された翌日、7時28分の時点でビリルビン値は9.4、次いで8時51分の時点でビリルビン値は9.2でした。この値は、医師が採用している基準においても光線療法を開始すべき数字です。病院側はビリルビン値が減少していることを光線療法の開始を見送った根拠のひとつとして主張しましたが、さまざまな要因で0.2程度の誤差が出ることが考えられるため、ビリルビン値が減少しているとはいえないとされました。

また、新生児高ビリルビン血症のもうひとつの治療法である交換輸血(※4)のリスクが高かったことも、光線療法の必要性を裏付けるものとなりました。

なお、裁判では脳性麻痺の原因についても争点となっています。病院側は新生児高ビリルビン血症が脳性麻痺の原因ではないと主張しましたが、胎児仮死や先天異常を原因とする根拠がなく、新生児高ビリルビン血症に特徴的な所見がみられることから病院側の主張は退けられています。

審理の結果、裁判所は光線療法の開始義務違反と新生児高ビリルビン血症による脳性麻痺との因果関係を認め、約1億5,292万円の損害賠償を命じています。

参照元:【PDF】メディカルオンライン医療裁判研究会「光線療法の適応基準に関する医師の裁量」
https://www.medicalonline.jp/pdf?file=hanrei_201305_02.pdf

※1:新生児高ビリルビン血症
核黄疸とも呼ばれ、赤ちゃんの血液中のビリルビン値が高くなっている状態を指します。この状態が続くと、脳性麻痺など重篤な後遺症を残すリスクが高くなります。

※2:光線療法
赤ちゃんの身体に特殊な光をあて、肝臓で処理されていないビリルビンを尿と一緒に排出できる形に変える治療法です。

※3:アテトーゼ型脳性麻痺
脳性麻痺のタイプのひとつで、自分の意思とは無関係に身体をよじらせるような動きがみられます。突然に動く場合もあれば、断続的に動く場合もあります。

※4:交換輸血
赤ちゃんの血液を少しずつ体外に出し、代わりにドナーの血液を補充する治療法で、血液中から速やかにビリルビンを取り除くことができます。光線療法で十分な効果が出ない場合などに行なわれます。

「顧客感動」を目指し、日々尽力する弁護士集団

弁護士法人ALG&Associates

弁護士法人ALG&Associatesは、平成17年(2005年)に、金﨑浩之弁護士によって設立された法律事務所。
東京都新宿区西新宿に本部を置き、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、福岡、バンコクなど国内外10拠点以上に事務所を展開。総勢90名以上の弁護士と200名を超えるスタッフが、医療過誤をはじめとする幅広い分野で問題や悩みを抱えるお客様をサポートしています。(数字は2023年6月調査時点)

監修弁護士よりメッセージ

監修弁護士から伝えたいこと

先が見えず、いま不安な状況にあるご家族を
おひとりでも多く救済したい

金﨑 浩之 弁護士
監修
弁護士法人ALG&Associates
金﨑 浩之 弁護士

私たちの仕事は、患者さん側の代理人として「患者さん側が勝つべき事件を、いかにして勝ち取っていくか」が大事なのです。医学への高い専門性と医療過誤事件に関わる多くの解決実績を持つ弁護士法人ALGの医療過誤チームが、おひとりでも多くの方を救済できるよう尽力しています。

目次