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無痛分娩開始後の緊急帝王切開の事例

この事例は、本サイトのスポンサーである弁護士法人ALG&Associatesが対応した解決事例です。

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  • 7,400万円で、訴訟上の和解成立
  • 無痛分娩
  • 子宮収縮薬(オキシトシン)
  • 吸引分娩
  • クリステル胎児圧出法
  • 帝王切開
  • 注意義務違反
  • 脳性麻痺との因果関係は否定
  • 一審請求棄却
  • 控訴審
  • 出生直後の低酸素
  • 患者側の勝訴を示唆

事例の要点と結果

麻酔を使って陣痛の痛みを和らげる、いわゆる無痛分娩を選択した妊婦さんの事例です。

分娩中に子宮収縮薬(オキシトシン)(※1)が投与され、次いで吸引分娩、クリステル胎児圧出法(※2)が行なわれましたが出産には至りませんでした。そこで急速遂娩(※3)(帝王切開)に切り替えられたものの、生まれてきた赤ちゃんは脳性麻痺を発症し、亡くなってしまったのです。

解決までの詳細

亡くなった赤ちゃんの両親は弁護士に相談して提訴に踏み切りましたが、審理した京都地方裁判所は請求を棄却しました。

1審では、子宮収縮薬の投与が赤ちゃんへの血流を遮断して低酸素に陥る可能性があることへの注意義務違反が認められましたが、それと脳性麻痺との因果関係は否定されたのです。もちろん両親は判決に不服でした

が、同じ弁護士に控訴審を依頼することに不安を感じ、新たな弁護士に依頼することにしました。

新たな弁護士に依頼、1審で棄却になった理由を精査

その弁護士が1審の判決内容を精査したところ、脳性麻痺との因果関係が否定された3つの理由が浮かび上がってきました。

これらについて弁護士が協力医に意見を求めたところ、

といった弁護士の主張を裏付ける見解が得られました。

また、分娩中の低酸素による脳性麻痺が全体の約1割というデータに関して国内の報告例を調査したところ、むしろ医療機関の過失によって脳性麻痺が生じるケースが多いことがわかったのです。弁護士は検討結果をまとめて控訴理由書を作成しました。

控訴審裁判所による審理の結果、出生直後の低酸素が認められるなど、患者側の勝訴を示唆する心証が開示されました。実際、裁判所が提示した医療機関側の有責を前提とする7,400万円で、訴訟上の和解が成立しています。

本事例の最大のポイントは、統計資料の位置付け

前述のような統計資料は、医師が適切な診断や治療を怠ったことが原因の医療過誤であれば重要な証拠になり得ます。しかし、医師が実際に行なった医的侵襲行為によってもたらされた医療過誤の場合は、証拠として成立しないことが多いのです。本事例は無痛分娩というリスクを伴う医的侵襲行為が選択されているので、後者に該当します。

また、分娩中の低酸素による脳性麻痺が全体の約1割という統計資料が仮にあったとしても、それは適切に分娩が行なわれていることを前提とした発症率のデータに過ぎません。無痛分娩のようなリスクを伴う医的侵襲行為が不適切に行なわれたら、重大な合併症が起こる可能性も当然高まります。
したがって、このような統計資料をもって脳性麻痺との因果関係を否定することはできないのです。

参照元:弁護士法人ALG&Associates公式サイト「医療過誤案件の解決事例」
https://www.avance-lg.com/customer_contents/iryou/jirei/sanka-bunben/sanka_jirei07/

※1:子宮収縮薬(オキシトシン)
子宮の収縮を促進する薬剤で、なかなか陣痛が起こらない場合や陣痛が弱い場合、そのほか人工的に陣痛を起こす必要がある場合に使用されます。

※2:クリステル胎児圧出法
赤ちゃんがスムーズに生まれてこられるように、陣痛が起きた際に医療者が手のひらや腕を使って子宮底を圧迫する技術のことです。

※3:急速遂娩
緊急時などできるだけ速やかに分娩を行なう必要がある場合に行われる処置のことで、鉗子分娩や吸引分娩、緊急帝王切開などがそれにあたります。

※4:ACOGの基準
米国産婦人科学会参加臨床委員会が定める基準のことで、分娩中の低酸素と脳性麻痺の因果関係について判断する場合に広く用いられています。

※5:脳室周囲白質軟化症(PVL)
赤ちゃんが生まれてくる直前、何らかの原因で脳内の脳室周囲白質という部分の血流が滞って低酸素になり、局所的な壊死を起こす病気です。

※6:医的侵襲行為
手術や麻酔など、身体への物理的な負担を伴う医療行為のことを指します。

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弁護士法人ALG&Associates

弁護士法人ALG&Associatesは、平成17年(2005年)に、金﨑浩之弁護士によって設立された法律事務所。
東京都新宿区西新宿に本部を置き、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、福岡、バンコクなど国内外10拠点以上に事務所を展開。総勢90名以上の弁護士と200名を超えるスタッフが、医療過誤をはじめとする幅広い分野で問題や悩みを抱えるお客様をサポートしています。(数字は2023年6月調査時点)

監修弁護士よりメッセージ

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金﨑 浩之 弁護士
監修
弁護士法人ALG&Associates
金﨑 浩之 弁護士

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