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分娩時低酸素とは、分娩中に何らかの原因で赤ちゃんへの酸素の供給が滞ることを指します。
低酸素の原因となる母体の状態もさまざまで、突然起こる常位胎盤早期剝離や臍帯圧迫、子宮破裂、子癇発作などは急激な低酸素状態をもたらします。一方、胎盤機能不全や42週以上も続く妊娠、過強陣痛、時間がかかりすぎる分娩などは慢性的な低酸素状態をもたらすとされています(下記参照)。
また、可能性は低いのですが神経障害を引き起こす「低酸素性虚血性脳症」に至ることもあり、結果として脳性麻痺の原因にもなります。以前は脳性麻痺の原因の多くが分娩時低酸素だといわれていましたが、現在では分娩時低酸素を原因とする脳性麻痺は10%に満たないと考えられています。とはいえ、依然として脳性麻痺の重要な原因のひとつであることには変わりありません。
それでは、分娩時に赤ちゃんが低酸素をきたす要因をもう少し詳しくみていきましょう。
何らかの原因によって臍帯が圧迫されると、赤ちゃんは低酸素をきたします。臍帯が圧迫されて血流が滞ると一時的に心拍が低下しますが、圧迫が頻繁に起こると血流の回復に時間がかかって心拍数の回復も遅くなり、結果として低酸素状態に陥ってしまいます。
子宮口が十分に開いていないのに過剰な陣痛が起こることを過強陣痛といいます。これは自然陣痛でも起こりますが、子宮収縮剤(陣痛促進剤)を投与した場合に多くみられます。子宮が収縮することで母体から胎盤への血流が妨げられるため、赤ちゃんは低酸素をきたします。
子宮破裂が起こるのは比較的まれですが、母子ともに生命にかかわる恐ろしい状態です。妊娠中に起こることは少なく、その多くは分娩中に起こります。要因として多いのは以前の帝王切開の傷跡ですが、多産婦(5回以上の分娩経験)や巨大児(4,000グラム以上の赤ちゃん)、難産、外傷なども子宮破裂のリスクを高めます。子宮破裂を予測することは困難ですが、突然の腹痛と同時に赤ちゃんの心拍低下や母体のショック症状がみられる場合、赤ちゃんの心拍が計測できなくなって陣痛が止まった場合などは子宮破裂を疑います。
妊婦さんの呼吸や血流に異常をきたすことで、代表的なものは「仰臥位低血圧症候群」です。これは妊婦さんが仰向けになった際、大きくなった妊娠子宮と背骨がお腹の太い血管を圧迫することで血流が低下することが原因です。結果として胎盤の血流も低下するので、赤ちゃんの心拍にも異常をきたし、低酸素に陥る可能性が高くなります。
妊娠中・出産直後いずれの場合でも、低酸素の症状は段階的に悪化していきます。それによる赤ちゃんの身体のダメージは臓器のトラブルにもつながり、まれではありますが脳性麻痺を引き起こす可能性を高めてしまいます。
かつては、脳性麻痺の原因の多くが分娩時の低酸素だと考えられていました。現在では分娩時の低酸素が原因となっているのは10%に満たないというのが定説です。とはいえ、脳性麻痺の重要な原因のひとつであることには変わりありません。分娩管理を適切に行なうことで、少しでも脳性麻痺のリスクを軽減させることが求められるといえるでしょう。
分娩時低酸素を予防する方法は限られますが、子宮収縮薬の不適切な投与を行わないこと、分娩時のモニタリングと母体管理を適切に行なうことなどは至極当然といえます。また、母体の状態が急変した場合、赤ちゃんの心拍に異常がみられた場合、生まれてきた赤ちゃんに蘇生が必要な場合などに備えたシミュレーションも重要です。 分娩時低酸素の予防について、以下でもう少し詳しくみていきましょう。
言うまでもありませんが、妊婦さんの既往歴や妊娠歴、家族歴といった基本的な情報を正確に把握し、リスクとなる要因を洗い出しておくことは非常に重要です。もちろん、妊娠中における合併症や赤ちゃんの成長の状況、羊水の量なども超音波検査などで明らかにしておかなければなりません。
脳性麻痺の発症には様々なリスク要因が複雑に関わっており、医療過誤(医療ミス)によるものも、残念ながら少なからず含まれています。お母さんや赤ちゃん側にリスク要因があった場合でも、「やるべき対応をしなかった」ときは、病院側の責任を問うことが可能です。
迷ったら、まずは医療過誤に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
参考文献 |
【PDF】産婦人科 診療ガイドライン―産科編 2020 『脳性麻痺と周産期合併症/イベントとの関連−最新の知見』 |
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