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鉗子を使用して行なう分娩を鉗子分娩、吸引器を使用して行なう分娩を吸引分娩といい、これらを総称して補助分娩と呼ぶ場合もあります。
お腹の赤ちゃんが十分に成長して陣痛が始まると、赤ちゃんは産道を降りてこようとします。しかし、赤ちゃんが正しい方向を向いていなかったり、赤ちゃんが大きすぎて産道を通れなかったりすると、分娩が途中で止まってしまいます。このようなケースでは、赤ちゃんが無事に出てこられるように鉗子分娩や吸引分娩を行なうことがあります。
また、以下のような状況でも鉗子分娩や吸引分娩を必要とする場合があります。
それでは、補助分娩の方法と赤ちゃんへの影響についてお伝えしましょう。
補助分娩に使用する鉗子は金属製の手術器具で縁が丸く、赤ちゃんの頭にフィットするようにつくられています。その鉗子で赤ちゃんの頭を慎重に挟み、妊婦さんのいきみのタイミングに合わせてそっと引き出していきます。
鉗子分娩によって、まれに赤ちゃんが傷ついたり、妊婦さんの膣口と肛門の間(会陰部)が裂けてしまったりする場合があります。
吸引分娩に使用する吸引器には、釣り鐘や漏斗のような形のゴム製のカップがついています。これを産道に挿入して赤ちゃんの頭に吸着させ、妊婦さんのいきみのタイミングに合わせてポンプで吸引します。
吸引分娩によって、まれに赤ちゃんの頭皮が傷ついたり、目の出血を起こしたりする場合があります。また、吸引分娩は肩甲難産(赤ちゃんの肩が引っかかって出てこられないこと)や黄疸のリスクを高めるともいわれています。
鉗子分娩や吸引分娩といった補助分娩を行う大きな目的は、分娩中に赤ちゃんが低酸素に陥らないようにするためです。つまり、適切な補助分娩は脳性麻痺の予防につながり、補助分娩が脳性麻痺を引き起こすということは本来であれば起こらないはずです。
しかし、補助分娩(の不適切な対応)と脳性麻痺との関連性を示唆する事例はいくつもあります。以下にひとつの例を紹介します。
このケースでは妊娠40週1日で自然破水、微弱陣痛との診断で陣痛促進剤を使用後、子宮底圧迫法を併用した吸引分娩を実施しています。ところが赤ちゃんの心拍低下が約15分間続き、それがさらに悪化したため緊急帝王切開が行なわれました。赤ちゃんは出てこられたものの低酸素に陥っており、それが原因で脳性麻痺を発症したと考えられました。
産科医療補償制度の原因分析報告書によると、赤ちゃんの頭が降りてこないと判断して吸引分娩を行なうのは一般的ですが、赤ちゃんの心拍が弱まっているのに吸引分娩を継続するのは一般的ではないと判断されています。
鉗子分娩も吸引分娩も、適切に行われるなら決して危険な方法ではありません。とはいえ、自然分娩に比べればどうしてもリスクは高まります。
何より大切なのは、明確かつ厳格な適応に基づいて補助分娩を実施するということです。日本産科婦人科学会が定める「産婦人科診療ガイドライン」では、補助分娩の適応や注意点が詳細に明記されています。その代表的な部分を以下に紹介します。
補助分娩は、原則としてその技術・知識に精通している医師本人、もしくはそうした医師の指導を受けている医師が行なうべきです。しかし、24時間体制で分娩を受け入れているという国内の産科医療の状況を考えると、たとえば当直の産科医師が必ずしも補助分娩に習熟しているとは限りません。緊急の場合など、補助分娩に習熟した医師の到着を待つ余裕がない、という状況も起こり得るでしょう。
もちろん医師の習熟レベルが高いに越したことはありませんが、残念ながら例外もあるということです。
補助分娩中は赤ちゃんの頭が降りてくることで臍帯圧迫が生じ、心拍に異常をきたす場合があります。できる限り赤ちゃんの心拍をモニタリングし、異常がみられたらすぐに対応することが重要です。
吸引分娩は陣痛発作に合わせて実施することが原則ですが、カップの装着から処置終了までの時間が30分を超えると赤ちゃんが頭蓋内出血のリスクが急激に上昇するといわれています。安全性を考慮すると処置時間は20分以内、それを超えるようなら鉗子分娩もしくは帝王切開への変更を検討します。また、20分以内であっても吸引の回数は5回までとされています。
脳性麻痺の発症には様々なリスク要因が複雑に関わっており、医療過誤(医療ミス)によるものも、残念ながら少なからず含まれています。お母さんや赤ちゃん側にリスク要因があった場合でも、「やるべき対応をしなかった」ときは、病院側の責任を問うことが可能です。
迷ったら、まずは医療過誤に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
参考文献 |
【PDF】公益財団法人 日本医療機能評価機構 【PDF】産婦人科 診療ガイドライン―産科編 2020 『脳性麻痺と周産期合併症/イベントとの関連−最新の知見』 |
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