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未熟児(未熟性)とは、医学的には妊娠37週未満で生まれてきた早産の赤ちゃんを指します。早産の赤ちゃんは臓器が成長しきらないうちに生まれてくるので、外の環境に適応することが難しく、しばしば合併症を起こしてしまいます。
一方、生まれたときの体重が2,500グラム未満の赤ちゃんを低出生体重児、同じく1,500グラム未満の赤ちゃんを極低出生体重児、1,000グラム未満の赤ちゃんを超低出生体重児といいます。このような赤ちゃんが生まれてくる確率は、日本では全体の約10%、年間約10万人とされています。その主な原因は、早産と子宮内発育不全だと考えられています。
脳性麻痺の要因は多岐にわたりますが、代表的なものが前述の未熟性であり、全体の約78%(※)を占めるといわれています。次いで胎児発育不全や子宮内感染、母体出血、胎盤異常などが挙げられますが、未熟性の割合は突出しています。未熟性以外の要因が早産のリスクにもつながることを考えると、未熟児は脳性麻痺を発症する可能性がますます高くなるといえるでしょう。
※参照元:書籍『脳性麻痺と周産期合併症/イベントとの関連−最新の知見』「未熟性」より
編集:松田 義雄・佐藤 昌司・ 藤森 敬也 メジカルビュー社(2021年7月29日)
それでは、未熟性と脳性麻痺との関連性をもう少し詳しくみていきましょう。
早産の赤ちゃんは正期産の赤ちゃんと比べて脳への血流が少なく、さらに脳の血流を自己調節する機能も未熟です。したがって、早産の赤ちゃんの脳は血液不足に陥りやすいといえます。
早産の赤ちゃんは人工呼吸器の管理を要するケースが多くなりますが、こうした医療行為に加えて気管支や肺の異形成(正常に形成できていないこと)が脳性麻痺のリスクになるという報告があります。
早産の赤ちゃんは循環機能が不安定で、血圧の変動による影響を受けやすくなっています。正期産の赤ちゃんと比べると、血圧の変動が脳の血流不足につながる可能性が高いと考えられます。
上記のほか、肝臓機能の未熟のためビリルビンをうまく排泄できず、ビリルビン脳症を起こす可能性も高くなります。
また、臓器の未熟性が原因の手術やステロイド投与、感染症、低血糖なども脳性麻痺のリスクを高める可能性があります。
早産の赤ちゃんは脳の容積が小さく、脳性麻痺や精神発達の遅れといった明らかな神経障害だけではなく、成長後の認知機能の低下にもつながるといわれています。具体的には手先の不器用さや、バランス感覚やスピード感覚の不足(発達性協調運動障害)などが起こりやすくなります。また、たとえ標準的な知能指数だとしても学習障害やうつ病などの発症率が高くなるようです。
こうした認知機能の障害は、学習困難や注意欠陥障害と関連する可能性もあります。特に超低出生体重児は学童期以降に不安障害を抱える可能性も高いとされ、それが思春期や成人期まで続くという報告も存在します。一方では適切な環境整備によって症状が改善するという見方もあるため、継続した医学的な介入が大切だといえるでしょう。
未熟児として生まれてくることを予防する方法は、切迫早産を起こさないように適切な管理を行なうことに尽きます。たとえば、日本産科婦人科学会による「産婦人科診療ガイドライン」には、切迫早産の管理として子宮収縮抑制薬や母体へのステロイド投与などが記載されています。
とはいえ、それだけですべての切迫早産を防ぐことは事実上困難です。早産で生まれてきた場合は、未熟児の特性を理解した上で脳の血流を維持し、低酸素や血液低下、感染症などに対する高水準の全身管理を行なうことが脳性麻痺の予防につながります。
脳性麻痺の発症には様々なリスク要因が複雑に関わっており、医療過誤(医療ミス)によるものも、残念ながら少なからず含まれています。お母さんや赤ちゃん側にリスク要因があった場合でも、「やるべき対応をしなかった」ときは、病院側の責任を問うことが可能です。
迷ったら、まずは医療過誤に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
参考文献 |
【PDF】産婦人科 診療ガイドライン―産科編 2020 『脳性麻痺と周産期合併症/イベントとの関連−最新の知見』 |
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