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医療過誤とは

ここでは、医療過誤の基礎知識を解説しています。医療過誤の特徴や種類、医療ミス・医療事故との違い、過失を判断する方法、医療過誤で問える罪などについてまとめました。

そもそも医療過誤とは?どう定義づけられているのか

医療過誤は、医療事故の一種です。「ヒューマンエラー」と呼ばれることもありますが、要するに人為的なミスに起因して発生する医療事故を言います。

ここでいうヒューマン(人)は、医師や看護師だけでなく、薬剤師、栄養士などが含まれる場合もあります。いずれにしても、人のミスによって起こされる医療事故が医療過誤です。

医療過誤が起きる原因には、医療従事者や医療システムの不完全が挙げられます。十分に注意を払い対策を講じていれば防げる事故でも、担当者のうっかりミス(不完全さ)によってエラーを発生させてしまうことがあるのです。

参照元:参照元:【PDF】J-STAGE/ヒューマンエラーの見方・考え方~ 医療過誤を振り返るときの着眼点~(日本内科学会雑誌 第102巻 第8号 平成25年8月10日)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/102/8/102_2082/_pdf

医療ミス・医療事故とはどこが違うのか?

上述のとおり、医療過誤は、人が起こしたミスによって起きる医療事故です。したがって、医療ミスと医療過誤は同じ意味と考えて差し支えありません。

一方、医療事故は医療過誤の上位概念です。人為的ミスか否かに関係なく、医療現場で発生するさまざまな事故という集合があり、その集合の一つに、医療過誤(ヒューマンエラー)が存在するという関係性になります。

そのため、医療過誤は医療事故の一つですが、必ずしも医療事故=医療過誤ではありません。医療事故のなかには、医師や看護師が病院の廊下で転倒したり、負傷したり、感染したりするなど、医療過誤に含まれない事故もあります。

医療過誤のさまざまな種類

弁護士法人ALG&Associates

医療過誤の種類は、以下の3つに分類できます。

手術のミス

手術ミスは執刀医のミスが代表的ですが、それ以外にも、手術に関わった医療スタッフとの連携ミス、診断ミス、麻酔薬の投与ミス(麻酔医の過失)などもあります。またミスの度合いも、被害が最小限にとどまるケースから、手術後に合併症を引き起こしたり、後遺症がでたり、死亡に至ったりする場合もあるなど幅があります。
出産時であれば、帝王切開に関わるミスなどが該当します。

薬物投与のミス

薬物投与のミスは、使用する薬物の分量・濃度・頻度を間違えることによって、患者さんに損害を与えてしまう医療過誤の一つです。医師や看護師による誤投与や過剰投与、薬剤師の調剤ミスなどがこれに該当します。また錠剤や粉末だけでなく、点滴・注射の際に分量や順番を間違えて医療事故が発生するのも医療過誤です。
出産時に多いのが、子宮収縮剤(陣痛促進剤)の過剰投与などが代表的な事例です。

その他の医療ミス

その他の医療ミスとしては、医師による診断ミスや診療ミス、手術後の経過観察を怠るなど注意義務違反、術前・術後における不適切な処置や対応などがあります。また、医師が治療の目的や内容を伝えなかったり、手術の危険性やメリット・デメリットを説明しなかったり、術後の説明を怠ったりしたために問題が起きた場合は、説明義務違反と呼ばれ、医療過誤に含まれます。

医療ミスが過失かどうかはどう判断されるのか

実際に起きた医療ミスが過失かどうかの判断は、「診療当時」の臨床医学の実践における医療水準に照らして行われています。また、医療機関ごとに求められる医療水準が異なるのも重要なポイントです。それぞれ解説していきます。

診療時点の医療水準に照らして判断

発生した医療事故が過失かどうかの判断は、それぞれの医療機関に求められる“臨床における”医療水準に照らして行われます。ここでポイントになるのは、学問における医学水準ではなく、「臨床医学の実践における」医療水準であることと、いつの時点での医学水準か?ということです。

時点に関しては、裁判が行われている時点ではなく、「医療行為が行われていた時点」での医療水準が適用されます。従って、当該医療行為が行われた時点での医療水準を満たしていなかった場合は、過失があったと判断される可能性が高くなるでしょう。

求められる医療水準は医療機関によって異なる

一口に医療水準といっても、実際にどれぐらいのレベルの医療行為が求められるのでしょうか。答えは、医療機関によって異なります。

例えば、最高裁平成7年6月9日判決の事例では、「当該医療機関の性格、その所在する地域の医療環境の特性等の諸般の事情を考慮すべき」とされており、すべての医療機関で同一の水準が求められているわけではないことがわかります。

同じ病院でも、規模の大きな大学病院と病床が少ない小規模な診療所とでは、求められる医療水準が異なるということです。

参照元:最高裁判所第二小法廷判決平成7年6月9日
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57057

医療過誤で追及できる法的責任とは

医療過誤があった場合に病院側に問える罪は以下の2つです。

不法行為

不法行為とは、過失によって他人の権利を侵害して損害を与える行為です。民法で規定されており、出産時の医療過誤で出生児が脳性麻痺になった場合も、これを適用できます。そして、裁判所に提訴することで、不法行為に対する損害賠償責任の追及が可能です。

債務不履行

債務不履行とは、何らかの契約を結んだ当事者が、契約義務を果たさないことです。出産時の医療過誤の場合も、治療を依頼した患者側とそれを承諾した医療機関側との診療契約が結ばれており、医療機関が実施した診療行為が診療契約に違反している場合には、債務不履行による損害賠償請求を行うことが可能になります。

不法行為と債務不履行の関係

医療過誤紛争の場合は、不法行為の要件を満たしていれば、債務不履行の要件も満たしていると考えられるので、この両者を区別すべき実益はほとんどありません。 もっとも、遅延損害金(利息)を算定する起算点や事項の期間が異なることに注意が必要です。

具体的には、不法行為の場合、遅延損害金は医療ミスが起こった日の翌日から発生しますが、債務不履行の場合、患者側が損害賠償請求した非からの発生になるので、不法行為の方が患者側に有利です。 医療過誤紛争では、一般的に紛争解決までに時間がかかるので、しばしば損害額の違いに大きな違いをもたらします。

また、時効の完成に要する期間は、債務不履行の方が長いので、既に不法行為の時効が完成している場合には、債務不履行を理由に損害賠償を求めていくことになります。

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弁護士法人ALG&Associatesは、平成17年(2005年)に、金﨑浩之弁護士によって設立された法律事務所。
東京都新宿区西新宿に本部を置き、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、福岡、バンコクなど国内外10拠点以上に事務所を展開。総勢90名以上の弁護士と200名を超えるスタッフが、医療過誤をはじめとする幅広い分野で問題や悩みを抱えるお客様をサポートしています。(数字は2023年6月調査時点)

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