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胎盤の早期剝離や臍帯の圧迫など、さまざまな理由でお腹の赤ちゃんに十分な酸素が届かない場合や、出産直後の呼吸や循環(血液のめぐり)が不十分な場合は、新生児仮死に陥る可能性があります。生まれたときに産声を上げない、呼吸が抑制されている、皮膚の色が悪い、手足の動きが鈍い、といった様子がみられるのは新生児仮死の代表的な症状です。
専門的な観点で説明すると、お腹の中の赤ちゃんが子宮から出てくる際に、呼吸や循環の機能が外の世界向けにスムーズに移行できない状態ともいえます。
新生児仮死の約90%は分娩前・分娩中の胎児機能不全に続いて起こり、その原因は母体のショック症状や早産、常位胎盤早期剝離、子宮破裂、臍帯トラブルなど実にさまざまです。このほか、先天的な異常など赤ちゃん側に原因がある場合もあります。
新生児仮死は、脳性麻痺の大きな原因のひとつだと考えられています。事実、日本医療機能評価機構「脳性麻痺児の実態把握に関する調査報告書」によると、脳性麻痺の50%が新生児仮死を経ており、そのうち18%に低酸素による脳症が認められているようです。
新生児仮死は、赤ちゃんに「低酸素性虚血性脳症」という脳障害をもたらします。これは読んで字のごとく、赤ちゃんの脳への酸素や血液の供給が滞ることが原因で起こる脳障害のひとつです。障害を受ける脳の部位は、酸素や血液がどのくらい不十分だったか、それがどのくらい続いたかによって異なります。
出産間近の成熟児に起こった急速かつ重篤な低酸素性虚血性脳症は、視床・大脳基底核という運動や感覚、認知機能などを司る脳の重要な部分にダメージを与え、アテトーゼ型脳性麻痺の原因になります。アテトーゼ型脳性麻痺では、身体をよじらせるような自分の意思とは無関係な動きがみられます。
また、軽度でも長時間にわたる低酸素状態は大脳皮質・皮質下白質という部分にダメージを与え、痙性両麻痺の原因になります。痙性両麻痺では手足の筋肉がつっぱり、自分で動かせないような状態になってしまいます。
新生児仮死を予期することは困難ですが、分娩管理・新生児蘇生という2つの視点から予防を検討することはできそうです。
前述のとおり、新生児仮死の約90%は胎児機能不全に引き続いて起こり、赤ちゃんの低酸素は心拍モニタリングの異常として現れます。その兆候を正確に把握して適切な分娩管理を行なうことが、新生児仮死の予防に加えて将来的な脳性麻痺のリスクを軽減させることにつながります。
もし新生児仮死や低酸素を疑う場合は、急速遂娩(きゅうそくすいべん=補助分娩や帝王切開のこと)の実施も検討すべきでしょう。そのためには、出産にかかわる医療スタッフが心拍モニタリングの正確に判読することはもちろん、それに基づく急速遂娩の実施可否を的確に判断することが大切です。また、新生児仮死の状態で生まれてくる可能性を考慮し、蘇生の準備も整えて分娩に臨むことも求められます。
新生児仮死は、人工呼吸だけでも大半が蘇生できるといわれています。ただし、重度の胎児機能不全などで出生時の低酸素が重篤な場合は人工呼吸だけで回復するとは限らず、高度医療を要するケースもあります。
脳性麻痺の発症や重症化を防ぐためには、少しでも早く低酸素から回復させることです。日本の産科医療体制では、ハイリスク分娩や胎児の異常が予期されていない限り小児科医師が出産に立ち会うことはほとんどありません。したがって、産科医師をはじめとした現場のスタッフ全員が新生児蘇生に関する技術や知識を持っておく必要があります。
脳性麻痺の発症には様々なリスク要因が複雑に関わっており、医療過誤(医療ミス)によるものも、残念ながら少なからず含まれています。お母さんや赤ちゃん側にリスク要因があった場合でも、「やるべき対応をしなかった」ときは、病院側の責任を問うことが可能です。
迷ったら、まずは医療過誤に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
参考文献 |
【PDF】産婦人科 診療ガイドライン―産科編 2020 『脳性麻痺と周産期合併症/イベントとの関連−最新の知見』 |
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