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動脈血の酸素量が低下した状態を呼吸不全といい、重要な臓器への血液量が減少して機能が低下した状態を循環不全といいます。いずれも原因はさまざまですが、重大な病気が原因になっていることが少なくありません。肺血栓塞栓症や出血、感染症、心不全、重篤なアレルギー発作などがそれにあたります。
妊娠中はお腹が大きくなるので横隔膜が上がってきますが、呼吸の回数に大きな変化はなく、むしろ換気量が増えて多くの酸素を取り入れられるようになります。そして循環血液量も心拍数も増加しますが、これらは赤ちゃんに十分な酸素を送り届けようとする生理的な変化といえます。
呼吸不全・循環不全を起こすと母体の酸素量や循環血液量が低下するため、必然的に赤ちゃんへの酸素供給量も足りなくなってしまいます。
母体の呼吸循環不全によってお腹の赤ちゃんへ十分な酸素が届かなくなると、赤ちゃんの中枢神経がダメージを受ける可能性が出てきます。特に急性の呼吸循環不全は、重篤な場合は母体が心肺停止をきたすこともあります。妊娠中にこのような状態に陥る原因としては、羊水塞栓症やA群連鎖球菌感染症などが考えられます(後述参照)。
母体が心肺停止に至った場合、当然ながらお腹の赤ちゃんに酸素が届きません。心肺停止から出生までの時間がかかるほど、赤ちゃんに後遺症が残る可能性が高くなります。ただし、海外の研究では脳性麻痺を残したまま生存するケースが決して多くはないとされ、ほとんどが死亡するか、後遺症を残さず生存するかのどちらかだといわれています。
一方、産科医療補償制度の報告では、脳性麻痺の原因が羊水塞栓症による母体の呼吸循環不全と考えられているケースが13例、羊水塞栓症以外による母体の呼吸循環不全では24例ほど挙げられています。
いずれにしても、赤ちゃんの心拍に異常がみられた場合は、母体の急激な呼吸循環不全に注意しながら管理することが非常に重要だといえます。
羊水が母体の血液に流れ込むことで肺の毛細血管が詰まり、それによって高血圧や呼吸循環障害をきたす状態を羊水塞栓症といいます。
日本では平成元年以降16年間で193例の妊産婦死亡に対する解剖が実施されていますが、羊水塞栓症が死因とされたのは全体の24.3%と1位でした(※)。不幸にも妊婦さんが亡くなる場合、もっとも頻度が高い病気は羊水塞栓症であることがわかります。
※参照元:日本産婦人科・新生児血液学会HP「学会活動~羊水塞栓症」
http://www.jsognh.jp/society/amniotic.php
本来は子どもが感染しやすく、その多くは風邪症状だけで回復します。しかし、まれに重大な全身性の感染症状を起こし、生命にかかわるケースも報告されています。特に妊婦さんが感染すると非常に危険で、敗血症によるショック症状を起こして死に至る場合もあります。
母体が重篤な状態であれば母体の生命を第一とし、赤ちゃんの状態にかかわらず蘇生が優先されます。帝王切開が行なわれる場合もありますが、その目的は母体の救命であり、赤ちゃんを取り出してお腹の太い血管を圧迫させないこと、大きな子宮をなくして心臓マッサージをしやすくすることが蘇生の可能性を高めるからです。
一方、母体の心肺停止からできるだけ早く赤ちゃんを取り出すことができれば、後遺症を残さずに生存できる可能性が高まるのも事実です。母体の蘇生を優先することは、結果として赤ちゃんを生存させることにもつながっているといえるでしょう。
脳性麻痺の発症には様々なリスク要因が複雑に関わっており、医療過誤(医療ミス)によるものも、残念ながら少なからず含まれています。お母さんや赤ちゃん側にリスク要因があった場合でも、「やるべき対応をしなかった」ときは、病院側の責任を問うことが可能です。
迷ったら、まずは医療過誤に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
参考文献 |
【PDF】産婦人科 診療ガイドライン―産科編 2020 『脳性麻痺と周産期合併症/イベントとの関連−最新の知見』 |
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