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子宮収縮薬過剰使用の事例1

この事例は、本サイトのスポンサーである弁護士法人ALG&Associatesが対応した解決事例です。

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  • 約1億2,846万円の賠償命令
  • 陣痛促進剤(プロスタグランジン)
  • 過剰投与
  • 過強陣痛
  • 分娩監視装置の確認不足
  • 胎児仮死
  • 生涯労働能力100%喪失

事例の要点と結果

出産予定日を過ぎても陣痛がなく、入院して陣痛促進剤の投与を受けることになった妊婦さんの事例です。

入院翌日の朝、担当医は陣痛促進剤「プロスタグランジン」を1錠投与し、それから1時間おきに合計8錠が投与されました。さらに点滴でプロスタグランジンの投与を開始、その後2度にわたって投与量を増やしています。生まれた赤ちゃんは仮死状態となっており、治療が行なわれたものの後遺障害が残り、生涯にわたって労働能力(※1)を100%喪失してしまったのです。

解決までの詳細

陣痛促進剤には、子宮の収縮を促して陣痛を起こさせる作用があります。出産予定日を迎えても陣痛がなく、赤ちゃんが大きくなりすぎる可能性がある場合などに使用します。

広く使用されている陣痛促進剤には「プロスタグランジン」「オキシトシン」という2種類のホルモン剤があり、どちらも女性の体内でつくられているホルモンですが、陣痛促進剤として使用する場合は同時投与が禁じられています。

陣痛促進剤の併用や過剰投与は、副作用(※2)で過強陣痛(※3)を起こす可能性が高くなります。過強陣痛とは読んで字のごとく陣痛が強すぎることで、赤ちゃんが低酸素に陥るおそれがあります。それを防ぐため、陣痛促進剤を使用する場合は用法・容量を守り、分娩監視装置を用いたモニタリングを行なうことが非常に大切です。

本事例では陣痛促進剤を規定よりも多く投与したこと、分娩監視装置によって赤ちゃんの状態を確認しなかったことなどに過失があるとして、医療機関に損害賠償を請求しています。その訴えどおり、裁判所はプロスタグランジンが1日6錠を上限と規定していること、錠剤と点滴を同時に使用しないよう定めていること、錠剤と点滴を連続して投与する場合は過強陣痛に注意するよう定められていることを指摘しました。

その上で、プロスタグランジンを8錠も投与したのは多すぎること、それから点滴を開始してさらに増量したのは許容投与量を大幅に超えていることを認めました。また、担当医は陣痛促進剤の投与前に30分間だけ分娩監視装置を用いただけで、他の装置で1時間ごとに1回だけ赤ちゃんの心拍を確認したところで赤ちゃんのモニタリングをしっかり実施していたとはいえないと判断しています。

医療機関側は「胎児仮死ではなく新生児仮死だった」と反論しましたが、新生児仮死に至るような状況ではなかったこと、分娩監視が行なわれていないので胎児仮死とする証拠がないこと等を根拠に退けられました。

上記によって医療機関側の有責が認められ、裁判所は医療機関側に約1億2,846万円の賠償を命じました。

参照元:弁護士法人ALG&Associates公式サイト「医療過誤案件の解決事例」
https://www.avance-lg.com/customer_contents/iryou/sanka/hanrei/hanrei21/

※1:労働能力
精神的、肉体的な力を使って労働を遂行する能力のことで、単に人間の働く能力と考えて差し支えありません。
後遺障害のためにどれくらい働く能力が失われたかを数値で表したものを労働能力喪失率といい、100%は後遺障害等級1級にあたります。

※2:陣痛促進剤の副作用
代表的な副作用は本事例で取り上げている過強陣痛ですが、結果として胎児機能不全や子宮破裂など深刻な状態に陥る可能性があります。陣痛促進剤を使用する場合は分娩監視装置による正確な観察が欠かせません。

※3:過強陣痛
十分に子宮口が開いていないのに、分娩直前のような強い陣痛が過剰に起こり、子宮の収縮が長く続くことを指します。

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東京都新宿区西新宿に本部を置き、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、福岡、バンコクなど国内外10拠点以上に事務所を展開。総勢90名以上の弁護士と200名を超えるスタッフが、医療過誤をはじめとする幅広い分野で問題や悩みを抱えるお客様をサポートしています。(数字は2023年6月調査時点)

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金﨑 浩之 弁護士
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