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弁護士/医学博士監修 産科医療過誤 解決への安心読本 「脳性麻痺」 » 【やさしく解説 】産科医療過誤による脳性麻痺の和解・裁判解決事例 » カンガルーケア中の新生児心停止の事例

カンガルーケア中の新生児心停止の事例

この事例は、公益社団法人日本産婦人科医会公式サイトで紹介されている裁判例から紹介しています。

TAG
  • 1億3,047万円の損害賠償命令
  • カンガルーケア
  • 顔色不良・全身蒼白・心肺停止
  • 低酸素性虚血性脳症
  • 経過観察義務違反なし
  • 説明義務違反なし
  • カンガルーケアは医療行為ではない

事例の要点と結果

第2子を妊娠38週の自然分娩で出産した妊婦さんの事例です。

赤ちゃんは生まれてすぐに少し上体を起こしたお母さんの胸に抱っこされ、いわゆるカンガルーケア(※1)が開始されました。その後すぐ、赤ちゃんの低血糖に対してブドウ糖液が与えられています。そしてカンガルーケアが再開されて30分後、赤ちゃんは顔色不良、全身蒼白、心肺停止の状態で発見されました。

赤ちゃんは蘇生されましたが、低酸素性虚血性脳症を起こして重篤な脳性麻痺をきたしてしまったのです。

解決までの詳細

医療機関に対して2億円を超える損害賠償が請求されましたが、本事例の争点は①低血糖への対応に関する過失、②経過観察義務違反、③説明義務違反などがポイントになりました。

まず経過観察義務違反について、本事例が発生した当時(2011年1月)は赤ちゃんに具体的なリスクがない限り、医療機器によるモニタリングや医療スタッフの同席による経過観察が一般的な医療水準として求められていたとは認められませんでした。

次に説明義務違反について、そもそもカンガルーケアは医療行為ではなく、母子の触れ合いや授乳という生理的行為としての側面が強い行為です。したがって、さまざまなリスクや注意点、方法を説明すべき法的義務が医療スタッフにあったとはいえないとされました。

このような理由で裁判所は医療機関の過失を否定し、請求は棄却されたのです。

しかし、当時と現在では法的に求められる医療水準は大きく変わっています。日本周産期・新生児医学会が発行する『「早期母子接触」実施の留意点』を参考に、同様の事例に対しては医療機関にとってより厳しい判断がなされることが想定されます。

参照元:日本産婦人科医会公式サイト「裁判事例から学ぶ」
https://www.jaog.or.jp/note/カンガルーケア中の新生児心停止-〈m-地裁2016-年1月〉/

※1 カンガルーケア
生まれてすぐの赤ちゃんを、お母さんが胸を上で抱っこすることです。実施にあたっては母子とも異常がないことが前提で、医師の判断によって行わない場合もあります。

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弁護士法人ALG&Associatesは、平成17年(2005年)に、金﨑浩之弁護士によって設立された法律事務所。
東京都新宿区西新宿に本部を置き、埼玉、千葉、横浜、名古屋、大阪、福岡、バンコクなど国内外10拠点以上に事務所を展開。総勢90名以上の弁護士と200名を超えるスタッフが、医療過誤をはじめとする幅広い分野で問題や悩みを抱えるお客様をサポートしています。(数字は2023年6月調査時点)

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