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脳室とは脳の内部にある空間を指し、通常は脳脊髄液で満たされています。そこに何らかの原因で血液が流れ込んだ状態を脳室内出血といいます。軽度であればそれほど問題は起きませんが、血のかたまりが大きくなると脳脊髄液の流れが悪くなって脳室を広げ、意識レベルの低下などをもたらす「閉塞性水頭症」という状態に陥ってしまいます。
脳室内出血は、脳室の周りの血管からの出血が流れ込んだり、脳出血による血のかたまりが脳室の壁に達して流れ込んだりするパターンがあります。新生児から高齢者までさまざまな世代に起こりますが、新生児の脳室内出血は特に1,500グラム未満の未熟児に多くなっています。未熟児は脳室の壁の部分の血管がもろく、生まれてすぐに出血しやすいからです。新生児管理が進歩した現在でも、脳室内出血が認められます。
軽度の脳室内出血であれば、その後の経過は比較的良好だといわれています。一方、重度の脳室内出血でVPシャント(頭とお腹をチューブでつなぎ、溜まっている脳脊髄液を流す手術)が必要なケースでは脳性麻痺の割合がやや高く、さらに脳実質に出血を伴う場合は高確率で脳性麻痺を合併します。
症状としては痙性麻痺(手足のつっぱりによる運動障害)が多く、失調性麻痺(ふらつきによる運動障害)やジスキネジア(自分の意思で止められない運動障害)もよくみられます。また、発達障害、学習障害を認めるケースもあるため、長期的な療育やフォローが必要なのは間違いないでしょう。
正期産で生まれてくる赤ちゃんの場合、脳室内出血を予防するには分娩時の外傷に気をつけることに尽きます。一方、早産で生まれてくる赤ちゃんの場合は脳室内出血の予防が困難です。したがって、できるだけ妊娠期間を延長することが大切になってきます。
また、臍帯を切るのを遅らせたり、臍帯に沿って血液を絞り出したり(臍帯ミルキング)して、赤ちゃんの循環血液量を確保することも有効と考えられています。さらに、出生前に母体に対してステロイド(ホルモン剤)を投与すると赤ちゃんの肺の成熟や血圧の上昇を促し、脳の血の巡りを安定させる効果があるようです。
妊娠32週に至るまでの間は、妊娠期間が1週ずつ進むごとに新生児脳室内出血のリスクは軽減するといわれています。さらに、妊娠23週以下の病院外で生まれた早産児には重度の脳室内出血が非常に多くみられます。
また、脳室は妊娠24週ころから急速に広がり、妊娠26週をピークに縮小していきます。この時期は脳の組織も血管も成長の途中でもろいため、脳室内出血が起こりやすいと考えられています。
加えて、未熟児の場合は脳血管の自動調節機能が十分に働きません。そのため血圧の変動が脳の血の流れに強く影響し、脳室内出血を起こしやすい状態になっているといえます。血圧を変動させる原因はさまざまです。特に未熟児の管理にあたっては呼吸や循環の変動を最小限にするように、赤ちゃんに触れる時間も極力短くすべきです。
脳性麻痺の発症には様々なリスク要因が複雑に関わっており、医療過誤(医療ミス)によるものも、残念ながら少なからず含まれています。お母さんや赤ちゃん側にリスク要因があった場合でも、「やるべき対応をしなかった」ときは、病院側の責任を問うことが可能です。
迷ったら、まずは医療過誤に精通した弁護士に相談することをお勧めします。
参考文献 |
【PDF】産婦人科 診療ガイドライン―産科編 2020 『脳性麻痺と周産期合併症/イベントとの関連−最新の知見』 |
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